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白い薔薇の追憶


くろすさんのアップされた綺麗な薔薇の写真にインスピレーションをいただきました。



今年購入した薔薇ほんとに柔らかい、いい白薔薇です2008年5月25日 自宅 にて...
アイスバーグ






きっとあなたに似合うと思って。

そう言って少し照れたように微笑んだ君は、
両手に一杯の白い薔薇の花を抱えていた。
夕方の大通り。
通り過ぎる見知らぬ人までも、振り返るほどに、
その姿は目立っていて、
さぞや恥ずかしかったでしょうに、とわたしは呟いた。

端から見たら、どんなカップルに見えるでしょうね。
親子? 姉弟? それともちゃんと恋人同士に見えるかしら。
わたしはいつもそんなことを気にしながら、
君と街を歩いていた。
レストランでも喫茶店でも。
二人っきりのはずのホテルの部屋でも。

10も年下の君の愛情は、あまりにも無防備すぎて。
わたしは戸惑ってばかり。
どうして素直に喜べなかったのだろう。
今になったらわかるのに。
君の真っ直ぐな愛情を疑いもなく信じられるのに。

今さら後悔しても遅いね。
両手で抱えきれないほどの白い薔薇の花束を受け取らなかったわたしを
君は少し悲しそうに見て、ごめんねって呟いた。
あの時ならまだ間に合ったのに。
無意味な「大人の分別」とやらにがんじがらめにされたわたしは
もう無理よって、君に背中を向けた。

君は追いかけては来なかった。
わたしも二度と振り向けなかった。
目立つ花束が恥ずかしくて。
年下の君に夢中になってる自分が恥ずかしくて。
そんなもの、要らなかったのに。
ただ君を好きでいられたらよかったのに。

もう遅いけど。
街角で、白い薔薇を見かけると、
あの日の君を思い出す。
君の熱い抱擁を思い出す。
今はもう、知らない誰かと幸せに微笑んでいるだろう君を
思い出す。



コメントの投稿

非公開コメント

切ないですね・・・

ふたつ並んだバラの花の写真と見比べながら、読みました。
もう無理よ・・・って、背中を向けた彼女。
別れ話の間際に、彼は大逆転を狙ったのでしょうか。
二度、三度。
読み返すたびに、隠れた情景が見えてくるようです。
切ないですね。
とくにさいごの、リフレーン・・・

ありがとうございます。

くろすさんの写真が。
とても綺麗な薔薇だったので。

街角に、
両手一杯にその薔薇を抱えた年下の男性と
その姿を目の当たりにして戸惑っている年上の女性。
そんな情景がふわっと浮かんできたのです。

彼の無邪気な笑顔と対照的に眉を顰めてなぜか不機嫌そうな彼女。
その二人の間にはどんな物語があるのだろうと考えていたら、
素直になれない年上の女性と
ただただ愛情を表すことしかできない幼い男性の恋愛が
見えてきました。

くろすさんも気に入ってくださるといいのですが。
たまにはエロスも封印してみたくなるのです。

思い出してしまいましたよ

私が始めて男になったのは大学2年のとき。

私が慕った相手の方は年上のひと。
結ばれるはずもない二人だったから、
その人は、私を受け入れる口実が欲しかったみたいで・・・
ある日、私にこう云った。
「私に真っ赤な薔薇を贈ってほしい」
私は始めて花を買った。
貧乏な学生だった私は薔薇の花が高いのに吃驚した。
なによりも、花屋のあふれんばかりの香りに
どぎまぎした。

そして、私は男になった。
女性のなんと素晴らしいことかも知った。


薔薇には、ひときわ深い思い入れがある。
プロフィール

まりあ

  • Author:まりあ
  • 普段はごく普通のOLですが、
    夜はエロ小説家気取りのまりあです。
    なかなか更新できないのですが、
    楽しんで書いていこうと思います。

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