恋 2.
夜、眠りにつく瞬間、ふと頭をよぎった笑顔。
それが妻のものでも、子供のものでもなかったことに私は動揺した。
4月から一緒に働くようになった別部署の女性だったから。
第一印象は、元気な女の子、だった。
少なくとも、自分より10は若く見えた。
だけど、実際には自分とほんの数ヶ月しか変わらない年齢だと知って、
驚くと同時に、うらやましかった。
あまり接点がないと思っていたのに、
5月、突然、彼女の部署と一緒にあるプロジェクトを立ち上げることになった。
それ以来、彼女をリーダーとして、毎週ミーティングが開かれることになった。
あれは、いつだっただろう。
ふと視線を感じて、そちらを見ると、
彼女のまっすぐな瞳をまともに見てしまったのは。
年甲斐もなく、ドキッとして、曖昧に微笑んだ。
彼女は少し驚いたように目を丸くさせて、次の瞬間、
華が綻ぶようにふんわりと笑ったのだった。
すぐに目を逸らしたけれど、
私の鼓動は早まったままだった。
気づくと、私は職場で彼女の姿を探すようになっていた。
視線の端で彼女の気配を捉えると、
用事もないのにわざと彼女のいる方へ近づいたりした。
別に何を求めるわけではない。
ただ、彼女を見ていたい。彼女の声を聞いていたいだけ。
なぜなら、私には妻も子供もいて、家庭を壊すわけにはいかないのだから。
そしてなにより、彼女を傷つけるわけにはいかないのだから。
ただ、ほんの少し私のことを気に掛けて欲しいのだ。
そう思うことは、許されないことだろうか?