「・・・さんっ、・・あさんっ、・・りあっ、まりあっ!!」
「えっ」
まりあが目覚めると、土井が真剣な表情でまりあの肩を揺すっていた。
「ぁ、土井さん・・・あの・・・」
「大丈夫ですか?」
「えっと。」
「ほら、キャンプ場、着きましたよ。」
「え?」
辺りは暗くなっていたけれど、遠くから人の笑い声が聞こえてきた。
「途中で道に迷って、俺が道を尋ねにいっている間にまりあさん、眠っちゃって。」
「え?」
「すみませんでした。俺の準備が悪いばっかりに。」
「・・・夢?」
土井はさっさと車から降りると、
キャンプ道具を降ろし、手早くテントを張り始めた。
まりあは自分の腕時計をみた。
午後7時半。
道に迷ったと思ったとき、もうすっかり辺りは暗くなっていたはずだったのに。
何だか変ね。
あの夢も・・・。
「っ・・」
思い出そうとしたけれど、頭がズキッと痛んだ。
だけど。
何となくからだが重怠い。
まるで・・・・
ヤダ、わたしったら、何を考えているの。
まりあは自分の想像に思わず顔を赤くした。
「さて。テントの中に入ってみますか?」
まりあがぼんやりしているうちに土井はテントを張り終わってしまった。
何となく頼もしく思える。
「まぁ、案外広いのね。」
「じゃあ、俺、バーベキューの準備をしますから、まりあさんはゆっくりして。」
「何か手伝うわ。」
「そうですか?」
パッと土井の顔に笑みが広がった。
「じゃあ、水をくんできて貰っていいですか?・・・その坂を上がったところに水道がありますから。」
「わかりました。」
まりあも笑顔で答えて、小さなバケツを手に取った。
坂道を歩くと、何だか身体の奥が痺れているような感じがよりはっきりとした。
「どうしたのかしら?」
声に出して言ってみる。
「何だか・・・・」
セックスした後みたい。さすがにそこは声にはしなかった。
それに・・・ちょっとまだ物足りないみたい・・・。
そこに思い至って、まりあはハッとした。
ヤダわたし、なんてハシタナイのかしら。
少し小走りになって、水道のある場所へと急ぐと、
もう余計なことは考えまいと、まりあは土井の元へ戻った。
そして夜。
「じゃあ、まりあさんは、そっちの寝袋に入ってください。」
「はぁい。」
すっかりバーベキューでうち解けた二人。
まりあは初めてのキャンプにすっかりはしゃいでいた。
「これって、案外広いのね。」
まりあは初めての寝袋の感想をそう述べた。
「あー、それ、一応二人用なんですよ。」
「二人用?土井さんのは?」
「こっちは一人用です。まりあさんが窮屈だといけないと思って。」
ちょっと照れたように土井が笑った。
「何だか、申し訳ないわ。わたしがそっちでもいいのに。」
「いいんですよ。キャンプが楽しいってわかって貰いたかったから。」
土井はまた笑った。
「・・・・」
「え?」
「・・一緒に・・・・こっちに・・・」
まりあが消え入りそうな声で言った。
だって二人用ですから。
「まりあさん・・・」
土井は一瞬ためらいを見せたが、すぐに自分の寝袋から出て、
まりあの隣に身体を滑り込ませた。
「ウフフッ、さすがに二人だと窮屈ですね。」
「そ、そうですね。」
土井が緊張した面持ちで答える。
「もっと・・・・くっついたら・・・・窮屈じゃなくなるかしら。」
まりあはそっと土井の背中に手を回した。
「ま、まりあさん・・・・」
土井が掠れた声でまりあの名を呼んだ。
まりあがそっと目を閉じた。
二人の熱い夜が始まった。
「・・・ったく。灯りを消さないと外から丸見えだってことがわからんのか、あの男は。」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。若いのだから。」
「本当にお前のお人好しにもあきれたものだな。」
「お人好しはあなたもですよ。」
柏木は寄り添うように立っている影をからかうように言った。
「帰りも道に迷ってもらうとするかな。」
影が言った。
「そんなに彼女を気に入ったんですか? 珍しい。」
柏木は影にそう言いながら、自分ももう一度まりあを味わいたいと思っていた。
「次はもう記憶は消してやらんぞ。」
影がブツブツと文句を言い始めた。
「時空を飛ばすのもごめんだ。いいか、お前は簡単に言うがな、俺にとっては・・・」
まだまだ影の小言は続きそうだった。
「ええ、わかっていますよ、わたしは今夜遅く帰りますから。妻のこと、よろしくお願いします。」
「わかってるならいいのだ。」
フンッ、と影が不遜に答えた。
道に迷うのは、道に迷わせようとする意識が働くからなのですよ。
テントの中で繰り広げられているまりあと土井の饗宴を覗きながら、
柏木はそっと呟いた。
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