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We lost our way. (04)


「村を少し、ご案内しましょう。」
私は、まりあさんと土井さんを誘い出した。
どうやら二人は長老たちにも気に入られたらしい。
はてさて、どうしたものか。
もちろん二人がその気であれば、こういうしきたりを受けいれられるのであれば、
問題はないのだが。






昨夜のことは、二人とも余りよく覚えていないに違いない。
ヤツの毒液によって、記憶をほとんど消されているから。
でも。
おそらくあの快感は刻み込まれているはず。
だからこそ。
午前中、あんな時間に、しかもあんな場所(いや我が家の上等な客間ではあるが)で、
人目も憚らずにアンナコトを・・・・。

まぁ、逆に言えば、それが出来るというのは、
おそらくその素質があるのだろう。
まりあさんも土井さんも、
きっと、気に入ってこれからも度々この村を訪ねてくれるだろう。
まずは私がそれをしくじらなければ。

「ここは、この村に古くからある神社です。少し風変わりな神が祀られているんですが。」
私は一旦言葉を切った。
「風変わりな神様?」
まりあさんが小首をかしげて私を見た。
かわいらしい。
肩より少し長い髪が、さらりと揺れて、首筋に隠れていたヤツの噛み跡が露わになる。
「ええ。」
「どんな神様なんですか?」
興味津々といった風情で土井さんが私を見た。
う~ん、どういったものか。まぁ、隠してもしょうがないし。
「・・・実は、吸血鬼なんです。」
「えっ」
「まぁっ」
まりあさんも土井さんも少し驚いた表情を見せる。
しかし、それ以上の反応は・・・・ない。
「この村は、もう古くから吸血鬼と共存している村なのですよ。」
私は淡々とさも当たり前のことのように話し始めた。
二人とも黙ったまま、聞き耳を立てている。
「吸血鬼というと、恐ろしいイメージが先行するものなのですが」
少し冷たい風が吹いた。
「この村では、吸血鬼に見初められるというのは、女性にとって最高の名誉なのです。」
空は澄んだ青空だ。
「もちろん女性だけではなく、その女性の属する一族、全てに名誉なことですが。」
「・・・血を全て吸われてしまうのではないのですか?」
まりあさんが少し恐々と尋ねる。
「いいえ。全て吸ってしまうことはありません。ほんの少しだけ、味わうだけです。」
「死んでしまったりは・・・しないのですか?」
今度は土井さん。
「慣れない吸血鬼の中には、ついつい血を吸いすぎてしまうものもいるようですが、たいていは手慣れた吸血鬼と一緒に最初は行動しますから、度が過ぎるような場合にはちゃんと止めに入ります。」
「そう・・・じゃあ、安心、ですね。」
『安心』?
ほほう、まりあさんは受けいれていますね。土井さんはどうかな?
「うん、命を奪わないって言うのは、うん、安心だね。」
こちらも『安心』ですか。フフフッ、上手くいきそうですよ、このお二人は。
「狙われるのは少女、つまり処女ばかりではありません。」
私がさらに言葉を続けた。
「人妻も老女も、もちろん男性も狙われます。」
「そうなんですか!」
土井さんが自分の頸下をさすりながら言った。
「男性にとっては、自分の妻を吸血鬼に差し出すことが・・・堪らない・・・コホン、栄誉だったりするのですよ。」
私は『快感』と言うべきところを『栄誉』と言い換えた。
まだそれは早すぎるかもしれないと思ったのだ。
「まあ、血を吸われるくらいなら・・・」
土井さんが自分を納得させるように呟いた。
「ええ、まぁ、血を吸われるくらい・・・なのですが。血を吸われると、女性はとてつもない快感を得る・・・ようですね。」
「そうなんですか?」
今度はまりあさん。何となく夢見るような眼差しになっていますな。
もしかして・・・自分もそうなりたいと望んでいるのでは?
覚えていないかもしれませんが、まりあさん。あなたはすでにその毒牙にかかっているのですよ。
「そのようです。・・・通常、人妻が襲われる場合、この村では必ずと言っていいほど、夫が同席します。あ、もちろん、こっそりと覗いているのですが、そのことは妻も吸血鬼も知っているのです。」
「そんな・・・」
まりあさんがほんの少し絶句する。土井さんはさっきから黙ったままですねぇ。
「妻は、吸血鬼におずおずと身を差し出すのですが、吸血鬼が不埒なことをしようとするとそれはもう、抵抗します。貞操の危機ですからね。ところが、吸血鬼は血を吸う一方で、催淫効果のある毒液をほんの少ぉし、流し込むのですね。すると妻は、抗う力を無くし、やがて吸血鬼の意のままに・・・・」
ゴクリ。
喉を鳴らしたのは土井さんだった。
ほほう、これは、これは。
私は心の中で笑みを浮かべた。かなりこの二人、いい感じです。

そこで私は神社の裏手にある古い洋館へと二人を誘った。
古いが豪奢な建物で、ここがヤツの塒になっている。
「このお屋敷は?」
まりあさんがキョロキョロしながら、奥へ奥へと進んでいった。
無防備に見えるが、さっきの私の話ですっかり「自分も・・・」と
その気になっているように思える。
豪華なリビングセットの置いてある部屋に入る。
「まりあさん、そこでくつろいでいてください。」
「柏木さんと土井さんは、どちらへ?」
「この館の主を呼んで参ります。」
私はまりあさんに優しい微笑みを残し、土井さんを連れて部屋を出た。
さてさて、いかなことになりますやら。



テーマ : 女が書く官能小説
ジャンル : アダルト

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まりあからお知らせです。

みなさん、もう既にお気づきとは思いますが、
このお話・・・「真夜中のまりあ」シリーズは、
柏木さんが主宰なさっているブログ、『妖艶なる吸血』の
モチーフをお借りしています。
吸血鬼が出てきたり、
妻の浮気を公認していたり、それを覗くことが喜びだったり。

まりあの中で解釈した形でお借りしたモチーフですので、
少々、異なる点があるかもしれません。
それはご了承ください。

また、より柏木さんの世界をお楽しみになりたい方は、
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コアな楽しみが待っていることでしょう。

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