ここに来たら、何だか、あなたに逢えそうな気がしたの。
ぽつりと呟いた。
でも、本当に逢えるなんて思っていなかったから、
あなたが不意に現れて、あたし、必要以上にドキドキしてる。
驚いて見つめるあなたの視線をまともに受け止めることも出来なくて、
あたしは夜空の月をじっと見つめた。
お気に入りの黒いドレス。
さっきまで友達の結婚式の二次会で男たちに囲まれていながら、
ちっとも楽しくなれなかったのに。
あなたに見つめられているだけでどうしてこんなにワクワクするのだろう。
ねぇ、黙ってるなら、帰るわ。
もっと優しく本心を打ち明けることが出来たら、
どんなにかかわいい女になれるだろうに。
あたしはあなたになんて興味ない・・・そんなふりをした。
でも、あなたにはあたしを激しく求めて欲しい。だから・・・
あなたの目を見つめる。
アタシノコト、コノママ帰シタリナンカシナイワヨネ?
あなたはそっと手を伸ばした。
ドキンッ・・・・
痛いほど胸が熱くなった。
あなたの手はあたしの足首に触れた。
身体中が熱くなってくる。
あなたの好きな黒いストッキング。
ぴったりと肌に吸い付いてくるこれをあなたに破られるのが好きだった。
あなたは何度も何度もその手触りを楽しむかのように、
あたしの足首をなぞった。
風が吹く。
あたしの熱い頬を醒ましてちょうだい。
そんなことを思いながら、あなたから顔を逸らし、あたしは空を見た。
あなたが伺うようにあたしを見ている視線を感じて、
あたしはあなたに心の奥を見透かされたくなくて、
ギュッと唇を噛んで、決してあなたのことは見ないと思った。
あなたの熱い唇が押し当てられて。
あたしの身体はだんだん熱く燃え上がる。
あの日、最後に逢ったこの場所で、二人を包んだ夕陽のように。