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「別れる?」
島田がまるで予期していなかった理恵の言葉に驚いて、必要以上の声をあげた。
理恵は島田の方を振り向きもせずに身支度を調えた。
「どうして?」
「どうして、って・・・もう、潮時でしょう?」
「バレたのか?」
「まさか!」
「じゃあ、どうして?」
島田の方を振り向いた時、理恵には一瞬、島田と神崎の顔がダブって見えた。
あわてて島田から瞳をそらす。
けれど島田の中に神崎の影を見いだしたことによって、理恵の中に生まれた罪悪感は消えない。
「あなたは、素敵な友達、だったわ。同じ秘密を共有するには、ええ、最高のね。」
理恵は決意していた。もうやめよう、これ以上、神崎や通子を裏切れない。
理恵は神崎と、島田は通子ともう何年も前からステディな関係にあった。
そして理恵と島田の関係は、ここ1年ほど続いていた。
「・・・もう、俺には、用がない、ってことか。」
「あなたらしくないわ。私たち、浮気でしょう?
ちゃんと割り切ってつきあってきたんじゃない。そうでしょう?
・・・もうこれ以上、通子に嘘をつかなくてもいいのよ。あなただって、そうするのが一番いいのよ。」
島田が必要以上に自分に執着していると感じて、理恵は、だんだん不愉快になっていった。
だから、これ以上一緒にいたら、互いにひどく傷つけてしまいそうで、
理恵は一刻も早く、その部屋から立ち去ってしまいたかった。
「お前は、本気だと思ってたよ。」
ポツリと島田は言った。
そうよ、本気だったのよ、でもそう言うと、あなたは困るでしょう?
理恵は思った。
ひどく心が傷んだが、口に出たのは、明らかに嘲りの感情を含んだ高笑いだった。
「あはははば。ご冗談!初めっから浮気以外の何ものでもないわ。」
そう言って理恵はなおも笑い続けた。悲しくて瞳に涙がにじんだ。
あわてて島田から顔をそむけた時、島田の顔がチラリと見えた。島田はひどく傷ついた表情をしていた。
「やっぱり、あいつを、神崎を選ぶのか?」
島田の声は低かったが、理恵には悲鳴のように聞こえた。
私が選んだんじゃないわ、あなたが選んだのよ。
理恵の体内で何かがきしむような音を立てた。
「じゃ、あなたは、通子よりも、私を選ぶことが出来る?」
そんなことはあり得ない。理恵は思った。
すべてはあの時・・・初めて島田と出会った時、あれ以来、島田は一度も私を選ばない。
一度でいいから、私を選んで欲しかった。
「ほら、ね。あなたに通子を捨てるなんて、できっこないわ。」
島田にとって一番大事なのが通子で、その次が神崎との友情であることを理恵はよくわかっていた。
そしてまた理恵も、神崎との安定した愛を捨ててまで島田を愛することは出来ないと、わかっていた。
だから、どんなに惹かれても、身体を重ね合う関係になっても、どこかに冷めた自分を忘れないように努力してきた。
けれどそれももう限界に来ている。
「・・・できる。」
「え?」
「できるよ、理恵が、神崎じゃなく、俺を選んだら俺も通子じゃなく、理恵を選ぶよ・・・」
「何、言ってるのよっ。ばっかじゃないの。あなたに、そんなこと、できるわけないじゃない!」
理恵は絶望的な気持ちで一杯だった。初めて会った日から島田が好きだった。
けれど島田は一度も理恵を求めたことはなかった。
それなのに、理恵が別れを決意したこのときに、理恵に執着する島田が許せなかった。
「もう、やめましょう。・・・もっと軽く、ドライに私たち、つきあってきたわ。
初めにあなたが望んだことよ。・・・だから、もっとあっさりと、別れましょうよ。
私たち、二人がまだ親友の彼女と恋人の親友であったあの頃に、もうそろそろ、戻らなきゃ。
これ以上、このままでいたら、私、いつかすべてを壊してしまうわ。もう誰も、傷つけたくないの。」
理恵はまた、泣きそうになっていた。
涙がこぼれるのだけは何とか止めていたが、
きっと島田には自分が泣いていることがわかるだろうと理恵は思った。
島田が理恵から視線を落とした。
「そうだな。」
弱々しい声だった。声だけではなく身体全体から弱々しさが漂っていた。
かつてこのように弱々しげな島田を理恵は見たことがなかった。
理恵の知っている島田はいつも自信に満ちあふれた強い男だった。
だから、打ちひしがれたような島田を見た時、理恵は唐突に思った。
思ったと言うより、感じたという方がより正確かもしれない。
こんなヒト、私、知らない・・・・
初めて抱く感情だった。
「もう一度だけ、聞いてもいいか?」
島田が救いを求めるような瞳で理恵を見た。
「理恵は、・・・俺のこと、初めから浮気だったのか?」
いいえ、初めから本気だったわ、理恵は島田の瞳を真っ直ぐに見つめて言った。
「そうよ。」
島田をより傷つけてしまうとわかっていながらも、理恵にはそう答える以外になかった。
「そうか・・・・」
島田は瞳を伏せた。
「神崎さん、もしかしたら私たちのこと、知ってるかもしれない。
・・・・でも、何も言わないし、何も聞かない。そして、とても優しいの。
優しすぎるから、だから私、つらくなったのよ。」
嘘ではなかった。けれど優しすぎたのは神崎だけではなかった。
あなたも、優しすぎたから・・・理恵は心の中で呟いた。
「次に会う時は、親友の彼女と恋人の親友として、会えるよね。」
理恵は最後の元気を振り絞って微笑んだ。
「・・・・理恵は、最高の女だ。」
島田が言って微笑んだ。いつもの島田に戻っていた。
そして彼女は、彼に背を向けて、その部屋から出ていった。
ひどく傷ついた自分自身を抱きしめて。
ひどく悲しい愛を残したままで・・・
これは…何ともコメントのしようがありませんね…
理恵って?…本名?…
いちファンには深くて悲しい内容ですね…
この内容の通りだとは思いませんが、時間は一方にしか流れていないので…元気出して下さいとしか言えません…
また明るく、底抜けにエロチックなストーリー、お待ちしております。
えーっと(^^;)
なんとお返事すればいいのか。
今回初めて、登場人物に「まりあ」以外の名前を使ってしまい、
混乱させてしまいましたか?
たまには、エロのないお話もいいかなと思って
載せてみたんですけど・・・。
う~ん。
中身も全くの作り事です。
そんなに深く考えずに、載せました。
ごめんなさい。。。
こんにちは。
深く馬鹿正直に捉えすぎてしまいました。
これからも心に、気持ちに正直な作品を待ってます。
心の葛藤が出居ていて良いですよ。
素敵な読み物として楽しめました。
経験が無ければ書けないかな?
>ロン様
お褒めの言葉、ありがとうございます。
経験・・・ですか? 笑
小説とは根も葉もある嘘である(佐藤春夫)
これが答えではいかがでしょうか?