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君が言った。
「嘘つき」と。
僕は何も聞こえなかったようなふりをして、ネクタイを緩めると
君をギュッと抱き寄せた。
一瞬だけ、君が身体を硬くした。
僕は君に拒絶されるのかと少し恐れた。
でも、それはすぐに解かれて、僕に身体を預けてきた。
さっき君が呟いた「嘘つき」という言葉はどこかに消え去り、
僕の気のせいだったのかと思われた。
だけど・・・そうじゃないよね?
君は確かにそう言った。
そして僕は確かに「嘘つき」だ。
4月1日、エイプリルフール。
この日だけは、嘘をついても許される。
だから海外のメディアはこぞって嘘のニュースをでっち上げる。
それを読者も理解して、笑って許す、そんな風潮があるらしい。
そんな話を君が僕にわざわざしたのは、僕をやんわりととがめたかったのか。
君の笑顔の奥で、君が泣いているのを僕は知っている。
そう僕は嘘つき。
君にも、僕の家族にも、嘘をついている。
そして君だけが、僕の嘘に気付いていて、それをやさしく許してくれる。
だから僕は君の優しさに答えるために、家族に嘘をつく。
その夜。
僕は君だけの僕になる。
ベッドの中で、君を抱きしめる。
強く。強く。
君はもっと強くと僕をけしかける。
これ以上強く君を抱きしめたら、君が壊れてしまいそうで、
僕は君を抱きしめる腕をふっと緩める。
その刹那。
君の瞳から歓喜の色は消え、深い悲しみに彩られた。
僕がその色を認めるか認めないかの僅かの間。
あっという間にそれは消え去り、君は瞳を閉じて、僕にキスをねだる。
「好き、好き、好き・・・」
いくら呟いても足りないほどに、君はずっと囁き続ける。
その囁きはやがて歓喜の喘ぎへと変わっていく。
僕は君を喜ばせるために、君を深く深くえぐり取る。
情事の終わり。
それは、ひとときの夢の終わり。
ほんのりと白む朝焼けの空。
君は一晩中、一睡もせずに僕を見つめていた。
僕も眠れず、君の髪を撫でていた。
これは僕たちの恋の終わりなのだろうか。
君の放った「嘘つき」という言葉が、僕をそっと君の扉の向こうへと押しやった。
テーマ : 日記
ジャンル : アダルト
どれほどかたく抱きしめられても。
どれほど熱く口づけを交し合っても。
どれほど執拗な愛撫を繰り返しても。
去らない疑念。
それを覚えてしまった男女は
まるで遠い昔、禁断の木の実の味を知ってしまったアダムとイブのように、
あとはひたすら、幸福の楽園から遠ざけられていってしまう・・・
いつになく深い心象世界。
声もなく息を詰めて読み通してしまいました。
素敵なお話。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
疲れているせいか、少しもの悲しい物語に
惹かれます。
更新スピードは相変わらずですが、
これからも温かく
見守ってください。