「まりあさん、手伝います。」
キッチンに沢井クンが入ってきた。
「素敵なキッチンですね。」
キョロキョロと見回しながら、沢井クンが言う。
「そう?あんまり使ってないだけよ。」
フフフと、わたしは笑った。
本当にこの子は若いんだと思う。
「じゃあ、そのカップを運んで。」
そういうと、はぁいと軽快な返事をして、沢井クンがキッチンを出て行った。
ストッカーからクラッカーを出して、冷蔵庫のチーズを載せる。
この前買っておいた、鶏レバーのパテも一緒に盛りつける。
簡単なおつまみを準備して、リビングへ行く。
サイトウが所在なげにソファに座っていた。
沢井クンはすっかりリラックスした様子で、床に座っている。
「どうぞ、たいしたものはないけど。」
そしてコーヒーに手を伸ばして、口元へ運ぶ。
仄かに甘い香り。
ホッとリラックスする一瞬。
「あっ」
沢井クンがコーヒーを自分のシャツにこぼした。
随分しっかりしているように見えたから、もうすっかり酔いは醒めたのかと思いきや。
やっぱり相当酔っぱらっているみたいだった。
「大丈夫?」
浴室のクローゼットからタオルを取ってくる。
「熱いですぅ。」
半分、涙目で沢井クンがわたしを見上げる。
ドキッ・・・
ヤダ、かわいい。
イケナイ、わたしも酔ってるのかしら。
コーヒーをタオルで拭き取るけれど、シャツには大きなシミが出来ている。
「着替えようか。すぐに洗えば、少しはマシだと思う。」
わたしは今度は寝室のクローゼットから、大きめのTシャツを探し出す。
「ごめんね、こんなのしかなくて。」
わたしが着ると、ゆとりがあるほどの大きさだけど、
男の子は・・・どうなのかしら?
「ハイ、すみません。」
沢井クンはいきなりその場で脱ぎ始めた。
目をそむけようかとも思ったけれど、
それも何だか、カマトトぶってるようで・・・。
意外にたくましい胸板に、またしても、ドキッ。
慌てて目を逸らしたら、こっちをじっと見ているサイトウと目があって、ドキッ。
わたしの邪な思いを見抜かれた気がした。
ヤダ、もう。
「すみません。本当に。これ、洗濯してもいいですか?」
沢井クンが立ち上がる。
「いいわよ、わたしがやるから。」
そう言って、シャツを受け取ろうとしたけれど、
沢井クンは自分でやると言って聞かない。
仕方なく、二人で脱衣場へと行く。
「なんか、すっげ、いい匂いがする。」
「何言ってるの。」
本気とも冗談ともつかない言葉を笑ってかわそうとする。
「ホントですよ。まりあさん、すごくいい匂いがする。」
沢井クンがわたしを熱い眼差しで見つめる。
ダメ、クラクラしちゃう。
沢井クンの顔がわたしの視界一杯になった。
ゆっくりと抱きしめられ、そっと唇が塞がれる。
「ンッ、ンンッ・・・」
甘い甘いキスだった。
さっきのサイトウの荒々しいキスとは大違い・・・
あぁ、体が溶けてしまいそう・・・
「まりあさん・・・」
リビングからサイトウがやってくる。
ダメ、こんなところ見られたら・・・。
わたしはふと我に返って、沢井クンを押しのけた。
「いいじゃないですか。」
沢井クンはあの若い子独特の強引さでもう一度わたしを抱き寄せようとした。
「ダメよ。」
わたしのカラダは、もう一度さっきの甘い痺れを感じたくて、
沢井クンのいいなりになりそうだったけれど。
辛うじて残っている理性で、わたしはそれをはねのけた。
「何?」
サイトウがわたしたち二人のいるところへやって来たとき、
わたしのショーツはグジュグジュに濡れていたのだった。
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