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月曜の夜のカクテルバー


カラン・・・
重いドアを押して開けると、薄暗い店内。
カウンターだけのカクテルバー。
カウンターの手元だけがスポットライトで明るく照らされていて、
それ以外は薄闇に紛れてしまう。
大人のお客だけが立ち寄り、ぼそぼそと密やかに語り合い、
人々の会話は低いざわめきで店内を満たす。
秘密を守りたいなら、この店で飲めばいい。
秘めやかな関係の相手と来るなら、この店が良い。





そう言ってわたしにこの店を教えてくれたのは、
果たして何人目の男だったのか。
いまはもう思い出せないけれど。
あれから何年、年月が過ぎても、
ここがわたしのお気に入りであることに変わりはない。
その日、わたしは一人でこの店にやってきた。
マスターはわたしのことを覚えているのかいないのか、
「いらっしゃいませ」
と言ったきり、こちらが注文するそぶりを見せない限り
わたしの顔を見ることもしない。
「少し酸っぱい感じでさっぱりしたロングカクテルがいいわ。」
ちょっと蓮っ葉な感じで、マスターに声をかけると、彼は眼差しだけで返事をしてカクテル
を作り始める。
一言もしゃべらなくても、気まずさを感じない空間。
目の前に差し出されたグラス。
ひんやりとしたグラスを左手で持ち、唇に寄せる。
ゴクッ・・・
口の中に拡がるミントの香りが週初めの憂鬱な気分を吹き飛ばす。
「はぁ・・・」

午後の会議が始まる直前、準備してあるはずの資料がないことに気づいて
入社1年目の美由紀を叱り飛ばした。
責任感がなさ過ぎる、と。
しまったと思った瞬間、口調を和らげたけど
あの子の表情は硬く凍り付き、しっかりわたしに反感を持った様子だった。
これだから最近の若い子は・・・・
そんな言葉が喉元までせり上がってくるのをなんとか押さえ、
あとは自分でやるから良いわ。次から気をつけてね。と
物わかりの良い上司の振り。
あぁ、頭が痛い。
「はぁ・・・・」
ため息をついて、最初の1杯を飲み干す。
「次は何にしましょう」
マスターが決して出しゃばるでもなく、次の注文を聞いてくれる。
「・・・ソルティドッグ」
グラスの縁にたっぷりと塩をまぶし、グレープフルーツも果実を搾って作られるこの店のソ
ルティドッグは一番のお気に入りだ。
いいオトコがいてくれたら、もっとおいしく飲めるのに。
心の中でそうつぶやいたとき、冷たい風が頬を撫でた。
「こんばんは。」
不意に声をかけられ、顔を上げると、隣の席に彼が居た。
「驚いた。」
わたしはさして驚きもしなかったかのように、片頬だけを持ち上げて笑った。
「君がここにいると思ってね。」
「飲まない人は来ないお店よ。」
「意地悪だな。・・・君に会いたかったから来たのさ。」
わたしの思ったとおりの返事をくれる人。
さっきまで澱んでいた心が生き生きとゆとりを取り戻していく。
「じゃ、いいね。」
彼はそう言うとわたしの足下に潜り込む。
グラスと同じくらい冷たい手がわたしの足首をつかみ、
「くっ・・・」
思わず声が漏れそうになる。
しっ、静かに
わかってる・・・
呷るようにグラスの中の液体を喉に流し込む。
彼の手はわたしの足首からふくらはぎ、膝裏、太ももまで伸びてくる。
まるでわたしの体温を奪い取るかのように、
でも本当はわたしのストッキングの感触を楽しんでいるだけだけど。
撫でられるだけで、背中がぞわりとして、
ブラの中では乳首が硬く尖ってくる。
彼の手に酔うように、ウォッカがわたしの体の中を廻っていく。
カタン・・・
空のグラスをテーブルに置くと、
すかさずマスターが次のカクテルを目の前に置く。
まだ、注文してないのに・・・
差し出されたグラスは、わたしの血液と同じ色のブラディマリー。
ふふっ、いまのわたしにぴったりね。
「あっ・・・」
ふくらはぎに押しつけられた彼の唇。
這い回るぬらりとした舌にわたしは欲情をかき立てられていく。
それでも。
ダメよ、噛んじゃダメ・・・、破かないで・・・
言葉とは裏腹に心ではもっと噛んで、破いて、辱めて・・・そう感じていく。
彼はその心の声に耳を澄ましながら、
さらにわたしの羞恥心をあおるように、
顔を上に上げて、そのままカクテルを愉しみなさい、と
紳士が淑女に勧めるような言葉を紡ぐ。
はい・・・
カクテル、おいしいわ・・・・
ともすれば乱れそうになる息を整えて、
わたしは淑女に見えるかしら、それとも娼婦?
そんなことを自分に問いかけながら、
精一杯、取り澄ましてマスターに声をかけた。
「ありがとうございます。」
マスターの声が聞こえたのか、空耳だったのか、
わたしはもう判断できなくなっている。
カラン・・・
ドアを開ける音で入り口に顔を向けると
マスターが「これからは貸し切りですよ・・・どうぞごゆっくり」と。
ニコリともせずに密やかに囁く。
あぁ、すべて知っていたのね・・・・
マスターが店の奥へ入っていくと。
彼はわたしを背中から抱きかかえながら、
器用に服の中に手を滑り込ませる。
「あんっ、あぁっ・・・」
彼の手に翻弄されて、頭が揺れるたびに、
長い髪がカウンターに乱れて拡がる。
そしてわたしの理性が吹き飛ぶまで、あと少し。
彼と一緒に、快楽の底まで落ちていく・・・。



テーマ : 女が書く官能小説
ジャンル : アダルト

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