今回は、エロはありません。ごめんなさい。
「今までの男がどうだったかは知らない。でも、俺は違うから。」
彼はあたしを抱きしめて言った。
ずっとあたしは彼を捜していた気がする。
運命の男性(ヒト)。
きっかけはもう忘れてしまったけれど、あたしはついに彼に出逢った。
そして。
彼と恋に落ちた。
だけどいつも不安で。
彼を捕まえていないと彼がどこかに行ってしまいそうで。
状況判断なんて、上手くできない。
いつでも、どこでも、誰が見ていようとも、あたしは彼とくっついていたい。
だから、だからあの時。
彼の職場の上司と偶然、街で出会ったとき。
彼がその人と話し始めて、あたしはほんのちょっぴり除け者になった気がした。
急速にあたしの不安は膨らんで、あたしは不意に彼の腕にしがみついた。
次の瞬間、彼はあたしを見て、そしてその表情は困惑したような怒ったような複雑なものだった。
あたしは悟った。
彼を怒らせちゃった。
もうダメ、嫌われちゃう。
泣きそうになるあたしを見て、彼はその人にそそくさと挨拶を済ませた。
その場から早足で立ち去ったあと、
少し人波の途切れた街角。
彼は急に立ち止まり、あたしを抱きしめて言ったんだった。
「今までの男がどうだったかは知らない。でも、俺は違うから。」
あたしの身体中に彼の温もりが伝わってきた。
「お前が不安に感じることは全部、俺が無くしてやる。絶対、お前を泣かしたりしない。」
あたしはでも泣いていた。悲しいんじゃなくて、うれしくて。
「いっぱいお前を安心させてやるから。大丈夫だから。」
あたしは彼の胸に顔を埋めて、コクコクと頷いた。
あたしと彼の物語はまだ、始まったばかり。